壺草苑

壺草苑

コラム

コラム

第15回藍染の古典と現在
2021/2/12

世界の藍染と日本の藍染を比較した際、そこにはどういった違いがあるでしょうか。

 
いくつか浮かぶ中でまず考えられるのは、天然原料のみで染める古典的な手法が、伝統産業として今なお続いていることです。

 

もちろん藍染自体は日本固有のものではありません。
中国や東南アジア、アフリカなどには、古くから藍染文化を持つ少数民族が今も暮らしています。


ただし今や彼らの中でさえ、化学的な藍染が当たり前となっているのです。
完全な自然由来の藍染を見る事はほとんど不可能と言え、土着の藍建ての技法は失われつつあります。

 

しかし日本の藍染はどうでしょうか。

この近代社会にあって、数百年前と変わらない天然染色が今なお続けられています。

それは世界的に見ても稀なことなのです。

 

日本藍染文化の最盛期であった江戸時代、人々の身の周りのあらゆる品は藍で染められていました。

それは当時の来日外国人たちが、その光景を”ジャパンブルー”と形容し驚いたという記録が残る程です。


かつての身分制度や繊維産業の推移、藍の染料としての特性などを背景に、日本ではとても大きな藍染産業が育まれていたのです。

そしてそれだけ日本人の生活に藍染が深く根付いていたからこそ、一時は途絶えかけながらも当時と変わらぬ技法が今に受け継がれているのでしょう。

    

とはいえ日本においても、現代の藍染の主流は化学的手法であり、天然染色はマイノリティです。
ひたすらに便利さを追い求めた時代を経て、地球環境に配慮した産業が注目を浴びる昨今。日本古来の藍染の返り咲きに、私たち壺草苑も僅かながら力を尽くしたいと願っています。

 

 

次回は古典的な手法から化学的な手法まで、とても多彩になった現代の藍染の種類を具体的にご紹介したいと思います。