壺草苑

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コラム

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第12回藍の実用性その1
2019/10/01

遥か昔から人々の生活と共にあった藍染ですが、

そこにはただ色を得るためだけではない、実用的な目的がありました。

今回はそんな生活の知恵としての藍染をご紹介します。

 

まず、ご存知の方も多いと思いますが藍染には防虫効果があるとされています。

これは藍で染めた布が持つ、独特のアンモニア匂を虫や蛇が嫌い、近づきにくくなるようです。

また繊維の強化という点でも有効です。

藍染は繊維の中まで浸み込まずに表面に重なって染まり付くため、繊維は藍でコーティングされます。

つまり染める回数を重ねるごとに色は濃くなり、繊維そのものも益々堅牢になります。

これにより虫に喰われにくくなり、また摩耗などにも強くなるのです。

 

ですから古い布の中には、藍で染めた部分は綻びがなく、

他の色の部分だけ破れたり虫に食われているものを見かけます。

人々はこういった藍染の持つ力を伝承的に知り、生活の至る所に活かしてきました。

日本人も昔から野良着や着物をはじめ、衣類や貴重品を包む風呂敷、旅衣装としても藍染を用いてきたのです。

 

その効力は現代の薬品と比べたら些細なものかもしれません。

科学的な裏付けがあるわけではありませんし、あくまで天然の忌避力ですから、天日干しの際、染めた布に虫がとまっていることも珍しくはありません。

 

ですが、自然と共にあった頃の暮らしにおいては貴重な生活の知恵であり、

それ故に現代にまで伝承されているのでしょう。

 

用の美とも言うべき、頼りになる藍染です。