- 第10回染色の今昔
- 2019/8/01
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今回は、染色の今昔についてです。
私たちが暮らす現代は、あらゆるものに彩色が施された鮮やかな世界ですが、
昔はどうだったのでしょうか。
きっと、今私たちが目にしている世界とは大きく異なる色相だったはずです。
かつて、寺社仏閣などの建物は主に鉱物から得る顔料で、
身分の高い人々の服装品は植物から得る染料で彩色されていました。
そしてもちろん藍染がその一端を担ってきたことは言うまでもありません。
植物や鉱物等の天然素材から色を得ることが染色の全てでしたから、
「草木染め」という概念は化学染料の台頭を受け初めて生まれたのです。
では、天然の色彩と科学的な色彩の違いはどこにあるのでしょうか。
端的に述べれば、それは鮮やかさと言えそうです。
天然の色彩には、その素材がもつ色以外の成分も一緒に定着しているため
色の純度が低く、落ち着いた色目に見える特徴があります。
一方で人工的な色彩は、100%その色だけに染まっているため純度が非常に高く、より鮮やかに眼に映るのです。
もちろん、化学的に鈍い色を表すことも可能ですが、
やはり植物でしか再現できない色味が天然染料にはあると感じます。
化学の発展とともに、世界は気付かぬうちに鮮やかさを増しているのかも知れませんね。